リノベーション(戸建)

銭函の家

2015年

所在地北海道小樽市

用 途住宅

構 造鉄筋コンクリート造一部ログハウス

規 模102.79㎡

施主が見つけてきた既存住宅がとても不思議な家だった。

1階がRC造でその上に2階建て切妻屋根のログハウスが乗っている。初めて見る形式に驚いた。  築年数は約13年と比較的新しいのだが、現地を調査して分かったことは、3階の三角形の窓が結露と経年劣化でぼろぼろな状態。2階のログハウスはもちろん無断熱のため冬は備付けの灯油ストーブをガンガン焚かなければならないことは容易に想像できた。そして何よりもプランがとてもおかしなものだった。

外部階段で2階へ上がると玄関とLDKで3階は趣味の部屋として使っていたようだ。そして、2階から階段で1階へお降りるとひんやりした、異常に天井の低い寝室のような空間と浴室があるだけだった。

何とも不思議な物件だったが銭函で物件を探していた施主は気にった模様。私達も何とも言えないこの変な感じに惹きつけられるように、このプロジェクトと関わることとなった。

設計上もっとも配慮した点は、ログハウスの部分の断熱改修を行うことと、ほとんどすべての木製サッシが不具合を起こしていたのでそれを更新すること。サッシは高断熱の樹脂サッシを採用しコスト削減に努めた。断熱改修の方法は既存のログハウスの外壁面に付加断熱を施し、最終的にはカラマツの荒木をタテ貼りにして外壁を仕上げた。これもコスト削減の対策として採用したのだが、結果的にはログハウスの外壁の上を再度木材で仕上げるというおかしな展開となった。

施主の要望は、3階のテラスから銭函の海岸を見下ろせるので、その眺望を生かしたいことと、玄関を1階にしたいということ。玄関を1階に移すことでプランは2転3転したのだが、既存階段の幅が小さく引っ越しの搬入に対応できないことが分かり、階段の位置も移動させた。1階は元々建物高さを低く抑えるために階高を抑えた設計になっていて、長身の施主のご主人様は梁の下を通るたびに、お辞儀しなければならないのを承知で、このプランを好んだ。

竣工してから何度かこの家に足を運んだが、かわいらしい小物や雑貨が少しずつ増え、日に日に住人の色の染まっていくこの家を訪問するのがとても楽しみになっている。

photo by Kei furuse

photo by Kei furuse