8月の初旬、一通のメールが事務所に届いた。
メールのタイトルには「はじめまして」と書かれてあった。
|
建築家1のコメント
|
新しい依頼かな?とちょっと期待を持ちながら、文章を読み、最後に名前(フルネーム)と住所と電話番号等全て書かれていたことにとても好感触を感じた。
実はメールというのは相手が見えなくて、その頃はあまり信用していなかった時。
でも、素直に思いを書かれていた印象が、私達に更に次の顔合わせの時への「どんなひとたちなんだろう。」というちょっとわくわくした期待が膨らんでいった。
|
建築家2のコメント
|
最近多いメールの相談だけで終わってしまうお客さんかな?と思いきや、文章を読んでいくと、今回のメールはちょっと違うぞという感じがした。
うちの事務所にたどり着いた経緯や計画の動機などが述べられていて、打合せの可能な時間帯や連絡先もきっちり書かれていた。
「これはっ」と思い、早速、メールでお返事を書いた。 |
クライアント1のコメント
|
「もうそろそろ35歳だよ」「そしたら家だよ」
っていうのが家づくり計画本格稼働の恐ろしも正直かつ短絡的な始まり。
それでもって、僕と相方は確実に都会好き。大きな本屋があって、夕食代わりに通える居酒屋と蕎麦屋が近所にありつつ、札幌駅やススキノからタクシーをお気軽に使える場所でなくては生活できない。温泉や山スキーも好きだけど、市民農園に興味はあるけど、普段の暮らしに大自然はいらない。
僕の頭の中では、なぜか住宅と建築家はセットものだったが、札幌市内(それもススキノからタクシー2000円圏内)で戸建住宅を建築家にお願いして建てるという選択肢は現実的にいかがなものでしょうというのは、いかに夢見がちな初心者でも分かるというもの。残念。念のため、繁華街の新築マンションを見学するも、僕ならこうする・したい感がむくむく沸いてきて押しとどめることできず。断念。
家は買い物じゃないんだよなーと改めて考え直して、じゃあというということで、「家=中古マンション+(リノベーション×建築家)」という方程式を編み出しました。素晴らしい発見であり、海図なき航海の始まり。
やっとm+oさんの登場です。不動産屋さんは別機会で。
当然ながら、建築家さんなんて知らないわけですよ、僕たちは。安藤忠雄(なんとなく有名)に頼むわけにもいかないので、いろいろな雑誌を買って、建築家ショッピング(失礼!)。判断基準は、
* 年齢が若い←価値観を共有できそう
* 作品がかっこいい←定義があいまいですが普通過ぎるのは嫌なので
ということが最重要。もちろん、近くにある、戸建じゃなくてもやってくれそう、といった条件は当然ありです。
で、どうしてかm+oさんでした。相方の一押しが決定打だったけど、オフィスのリノベーションが僕の家イメージと同調したんだと思う。
結局、最初で最後の建築家さんへの問合せ・相談メールとなったわけだけど、勇気いりますよねー。敷居高そうだし、値段高そうだし。ただ、嘘ついてもしょうがないし、予算はあまりないけど僕らなりの思いはあるしで、本当に正直に、そして本気でお願いしたい気持ちがあるんですよという渾身のメールだったと思います。
|
クライアント2のコメント
|
いやー、正直本当にスタートしてしまうとは思ってませんでした。「家計画」。
いつの間にやら建築や住居関係の本をごっそり買いあさり、うっとりいそいそ読みふけっていた夫。対する私は「家なんていらない。借金作りたくないもん。それよりこの本、ジャマ」と見向きもしていなかったのだ。その温度差たるや、旭川の真夏と真冬がごとし。
それでも、その温度差が夫婦関係に微妙に影に及ぼすに至って、ついに決意せざるを得なくなった。わかりましたよ。やりましょう。乗りましょう。お家、作りましょう。
とは言え、やると決めてしまえば現金なもので。
「やっぱりさー、窓のあるお風呂がいいよねー。で、昼間に日光浴びて本読みながら入るの」「キッチンは絶対アイランドタイプ。そしたらご飯支度や片付けしてても話とかできるよー」などと期待希望妄想はむくむくむくむく。
夫が「これとこれとこれは読んだ方がいい」という家本で半端に知識とあこがれを募らせているから、予算も考えずに「雑誌とかに出るような家がいいねー」。しまいにはモデルハウスやモデルルームに出かけて、「うーん。どれもこれもピカピカで何もかもそろってて便利そうだけど、私たちの住まいって感じじゃないね。住み手としての私たちが見えてこないね」なんて小生意気なことまで言い出すようになってしまった。
そんなこんなでたどり着いた、ほとんど唯一無二とも思える選択肢の中古マンションリノベーション。実はm+oの前にも一度、不動産屋を通して年配の建築家を紹介されたことがあった。が、申し訳ないがこの方はいただけなかった。確かに見せていただいた作品の写真はどれもこれもすばらしいものだったのだけれど、いかんせん「ま、私に任せておけば悪いようにはしませんよ」的態度が気に食わない。これじゃあ、いっしょに家造りはできん。
じゃ、だれに頼む?
夫がいくつか付箋を貼った北海道の建築事務所を紹介する雑誌の中で、私が一番気になったのがm+oだった。
けれんのない、いい意味でどこかゆるさを感じさせるデザイン。同年代で、しかも男女ユニットというのもポイント高い。
あと、インタビューで「住宅設計で一番大切にすること」に「住み手のさまざまな思いを共有し、理解しながら(中略)デザインを心がけている」、そして「住宅設計で楽しいと思うこと」のひとつに「クライアントの夢や希望を聞くこと」と答えている点。
この人たちとなら、私たちの思う家造りができるかも。
雑誌のツーショット写真を見ながら、端から相手にされないなんてことのないよう、ちらとでも興味を持ってもらえるよう、一生懸命問い合わせの文を考えた。
「これはっ」と思っていただけたとは、うれしい限り。何せ3時間かけた力作ですから(笑)。
|