Net Exhibition “BOOK HOUSE”
2005.12.05 / 意見交換

意見交換の日がやってきた。

率直な意見を言い合って、クライアントの考え、m+oの考え、お互いの考えを理解し合うことができたとても重要な打合せだった。

そして次のプランの方向性が見えてきた。
建築家1のコメント
建築家の共通項として、設計を行うことが、最終的に自分達の「作品」になることだと毎回考えている。
「作品」になるまでの設計過程は様々で、クライアントの要望を聞いたうえで(ここまではみな共通)すぐに具体的な設計作業に入る場合もあれば、テーマになるコンセプトを導き出し、更に自分なりの建築的なテーマを常に持ちながら、コンセプトを構築してくということ=作家性を出すような設計スタイルを持つ人もいる。

私達はというと、クライアントの持つそれぞれの「生活スタイル」をコンセプトとしこの家にしかないテーマを見つけ、設計をする。
だから、「キッチンハウス」も「N-h@us」も「k-pod」も・・・みんな違う。

クライアントの気持ちよい住まい方を元に、私達なりに読み解いて導きだしたコンセプトが「作品」になるのである。
クライアントが違うから毎回違う「作品」を作る事ができる。
これって、けっこう楽しいのです。わくわくします。
(もちろんうまく行くことばかりではないですが。)

「BOOK HOUSE」のクライアントは「コンセプトを強く出してほしい」と言ってきた。
今までも、住まい方やなぜこのプランかという話をしてきたが、率直に言われたのは初めてである。
最初から「作品」を強く意識して設計できる訳だ。
お互い納得するまで話合った。
「蔵書の森」がテーマになって生活空間に自然に本が溶け込む感じ、共存というより空間を作る=本棚となるのか?
建築家2のコメント
模型を包んだ風呂敷を片手にクライアント2がやってきた。少し遅れてクライアント1もやってきた。

まず、なぜ「BOOK HOUSE」なのかを説明し、クライアントの意見を聞き、あらためて「BOOK HOUSE」で行こうという事を確認しあった。

その上で、クライアントは驚くべき提案をしてきた。
『要望書に書いてある事はとりあえず無視して、まず「BOOK HOUSE」とはどうあるべきかを考えてください。』というものだった。こんな幸せな提案をしてくれるクライアントに出会ったのは初めてである。
そして、私は第1案の構想段階で浮かんだ案をクライアントに示した。クライアントも興味を持ってくれて、この考えでやってみることになった。

打合せが終わった後、私たちはこの「BOOK HOUSE」は「作品」になると確信した。
クライアント1のコメント
いやいや、ノーガードでの打撃戦です。

僕らの出した命題が「間取りをどうこうではなく、Book Houseとは何ぞや」ですからね。あわや、チームBook Houseの分裂、崩壊の危機っていう局面かと。信念を持って出したメールも、読みようによっては100%いちゃもんです。

でも、ここでも乗り越えましたね、チームBook Houseは。

素人施主なりに真剣に考えた妄想も、一所懸命に考えているからこそですけど、二人を信頼して、施主?建築家の垣根をちょっとだけ越えて、じっくりと話し合っていけば、思いもよらない形で蛙飛びの飛躍を見せるものだと実感しました。

家づくりのボキャブラリーが少ないので、説明が長く、そして理解が遅いため、ときに行ったり来たり、ときにあらぬ方向にと迷走する僕らをお導きいただきお二人にはホントに感謝です。
クライアント2のコメント
垣根が取り払われた、というんですかね。
この日がまさに「チームBOOK HOUSE」の始まりでありましょう。

これまでは、やはり互いに遠慮があったと思うんですよ。お互いに領分を乗り越えてはいけないというか、施主は自分のほしい家のイメージを伝え、建築家は自分たちのセンスをまぶしつつ、それを最大限にカタチにする、みたいな。

でも、それは私たちの意図するところではなかったわけです。
「私たちは『作品』がほしいんです」。
ちょっと恥ずかしいので目をつぶって、でも思い切って言ってしまいましたよ。
家のイメージを伝えたり、暮らしぶりを伝えたりというのは、「私たちの家」のコンセプトを考えてもらうためのもの。
それが決まったら、そのコンセプトを最大限に表現してほしい。タイトルが立ち上がってくるようなものであってほしい。

そのためなら、ワタクシたちの希望のひとつやふたつやみっつやよっつ、無視してもかまわない。建築家のエゴみたいなものを押し付けてくれてかまわない。

もちろん、「それではいくら何でも暮らせない」というNGを出すこともあるだろうけれど、極力そういうことが少なくなるように趣味嗜好から1日の行動までことこまかに伝えてあるし、ダメから生まれる何かにもまた期待するわけで。

垣根はあったかもしれないけれど、信頼はそれ以上にあった。
だからこそ、思い切って「要望は無視していい」と言えたんだとも思う。

ちなみにこの日は私の誕生日。私と「チームBOOK HOUSE」にハッピーバースデー。
この当時は、こんな企画をやるとは思っていなかったので、当然打合せ風景の写真など撮っているはずもなく、これはイメージ写真です。
打合せの中で示した概念図
3つに分断された空間を貫通するように、本棚が配列されることで、分断された空間同士の関係性を強める。
生垣のように並んだ2列の本棚がパブリックな領域とプライベートな領域とその中間的な領域を形成する。
また、住人のあらゆる行動に対して、この本棚が何らかの関わりを持つような仕組みを作る。
この考えを元に第2案のプランを進めることになった。