設計を進めるにあたってどうしても入手したかったのが、既存建物の図面だ。
築25年も経っていると、手に入らない場合も少なくないが、今回は幸いにも管理会社に当時の竣工図があったので、クライアント2に同行していただき、図面を借りることになった。
そして、衝撃の事実が明らかにされることになった。
この日は、ほかにクライアント2からイメージファイルを受取った。
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建築家1のコメント
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マンションも決まり、これからプラン作成に入ります。
そのためには既存の図面が必要になります。(出来れば)
現地を視察して更に詳細な部分(下地や構造・配線・配管等もろもろ)を確認できた方がより良いので今回は竣工図面が手に入って助かりました。それでも壊してみないと分からない部分があるのがリフォームの難しいところ。
再確認のため真っ先に開いた構造図のページ
「・・・。」
何かがある。古くてぼやけているけど、どうみてもRC壁らしきものがある。
「耐震壁だ。」
私達二人は一気に落ちた。でもそんな暇はない。
急いで建築家2がクライアント2に電話をした。
でも、結果的にそんなに大きな反応はなかった。
逆に「期待してます。」の言葉を受け、私達二人に気合いが入った。
信頼関係が築かれている。いや築こうとしている。
頑張らねば! |
建築家2のコメント
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担当者に事情を説明して、あっさりと当時の竣工図の製本を借りることに成功した。そしてクライアント2から資料を受取って、ビルの前で別れた。
ふと横を見ると、私の隣で当時の図面に目を通していた建築家1が、凍りついていた。
「えっ?」居間と寝室の間にコンクリートの耐震壁がある。この壁は壊すことはできない。
つまり、クライアントと話していたワンルーム空間がつくれない。しかも売買契約は先日終了している。
とにかく、一刻も早くこの事実を伝えなければと思い、緊張してクライアントに電話を入れた。
しかし電話での反応は以外にもあっさりしたものだった。そして、後日メールが送られてきた。
『壁の件では、早々にご連絡いただきありがとうございました。
その後、何か判明したことなどはありますでしょうか。
私たちとしては、確かにすべてをワンルーム風にぶち抜けないのは残念ですが、
まあいたし方ないことはいたし方ない。
むしろ、この制約が設計するお二人の創造力をかきたて、
最大限に私たちの望む住まいにすべくサプライズを打ち出してくれるものと、
逆に期待しながらデザインがあがるのを待つ気持ちでおります。』
このクライアントは只者ではない。 |
クライアント1のコメント
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図面確認は、重大な事件勃発。待ち合わせ場所を間違えたのは軽微なトラブルです。えーと、重要なのは、壊せると思っていた壁が、もしかしたら構造材かもしれないことが判明したことです。それも3箇所ね。もし、壊せないとすると、もちろんワンルーム化計画は無理。相方には冷静に、壊せないならそれはそれで、牛プロジェクトの創造性をかきたてるのでは、とかなんとか言いましたが、まずいかも。
設計事務所曰く、コンクリートの壁は150mm程度なので恐らく構造材ではない。けど、念のため、構造家さんに確認しますとの由。
「おーい、一緒に下見したじゃんかよー。頼むよー」というのが心の声です。
ただ事ではない心の声の解説。相方との電話と僕の胸の内。
「壁、壊せないって?」、「まじで」
「えー、壁たたきながら大丈夫って言ったじゃん」「・・・」
「今、銀行で判子をバンバン押してきたばかりだけど、やめる?」「・・・」
「ほかに衝撃の事実ってあるの?」「ないけど、構造の壁はねー、3つとか・・・」
「だめじゃん。まずいでしょ、それは実際」「じゃ、やめる?」
ここまで1分少々。それで出した結論が、
「やる」
どこから、このセリフが出てきたのかは、もはや謎ですけど、あれですよ、m+oさんに払った5万円が惜しかったとか、銀行への体面とかじゃあないです。
何かなー、走り出した列車は止められないというのでもないし、投げやりな結論なんて1000万円以上の生涯最高金額プロジェクトではあり得ない。
説明するのは難しいけど、ドラマ性でしょうかね。困難を乗り越えてみたいな。ハプニングがあって、サプライズがあって、喜び度と完成度が倍加するという、まったく非論理的な期待感というものです。もちろん、m+oさんに寄せる、これまた説明のつかない信頼感というのが、なぜかあった。なんせ既にチームBook Houseですから。衝撃事実発覚後のメールに書いたことは真実ですが、その葛藤はあっさりではなく、こってりの味噌味のチャーシュー載せてのライスも付けてのレベルでしたよ。
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クライアント2のコメント
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「はあ?」
電話をもらったときには、正直、何と言ってよいやらわからなかった。
空気の抜ける家。家全体に光、風、目線が抜ける―つまり仕切りを作らない家というのが希望だった。だからこそ、壁が抜けるか物件をチェックしてもらったはずだったのに。に。に。
反応があっさりしてたのは、あ然呆然として何も言えなかったというのが正しいですね。きっと。
でも、買っちまったもんはしょうがない。ショックだし残念ではあるけれど、それでm+oに対する信頼が根底から揺らぐ(ほんのちょっとゆらゆらはしましたけど)ものでもない。
で、↑のメールです。
こだわりを捨ててはいけませんが、あきらめが肝心なこともある。きっとこれから、いっぱいそんなことが出てくるんだろうなと思いつつ。 |